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News2013.08.20
- 海外現地レポート
エチオピア・ケニヤの旅
大学の先生を中心として毎年海外の幼児教育の現場を訪ねる旅も今年はアフリカのエチオピアとケニヤへの旅となりました。アフリカの中でもエチオピアは少し特殊な国で、彼らは基本的にアフリカ人と呼ばれるのを嫌い、自分たちはシバの女王とソロモン王との伝説の愛によって生まれた国であると信じており、20世紀にアフリカの国々が次々に列強の植民地となって行く中、独立を保ち独自の文化を築いてきた誇り高い民族と言われています。
またエチオピア西部に位置するアワッシュ川周辺で発掘された約320万年前のものとされるアウストラルピテクス・アファレンシス(通称ルーシー)の骨が人類学上、世界的に有名で、首都アジスアベバの国立博物館に保管されそのレプリカを見ることができました。人類の誕生はここエチオピアの大地から始まったと言っても過言ではないでしょう。
さらに我々は北部にあるラリベラへ飛び、世界遺産でもあるエチオピア正教会の地下岩窟教会群を見学しました。ここは空港から2時間あまり山岳地を登ったところにあり、標高は2300mの高地です。彼らはアフリカに聖地エルサレムを再現しようと切り開き、ゴルゴダ、ヨルダン川、ベツレヘムなど、聖地にちなんだ地名がつけられています。
現在でも彼らは独自の教えを信じており、白い聖服をまとった司祭たちに対する人々の畏敬の念は計り知れないものがあります。ほとんどの教会は地下に掘られた窪地に作られており、夏は涼しく、冬は暖かい環境を保つと同時に敵から発見されにくいという利点もあったようです。
ここエチオピアに来てみると50年ほど前の日本から時間が止まってしまったようなどこか懐かしい感覚にとらわれました。首都のアジスアベバでさえ王宮や国会付近だけは舗装され、信号も動いていましたがその他では未舗装の道に穴が空いており、信号はあるもののほとんどが壊れている状態でした。ただそこで生活している人々は大変活気があり、市場などはものすごい人で溢れかえっていました。小麦を満載したトラックの上に、さらに小型トラック(3輪)を人力で載せようとしている光景にはみなびっくりさせられました。AIDSの患者が多いことで知られており、世界でもかなり貧しい部類に入る国ですが街の珈琲店で飲んだモカの味は抜群で人懐っこいエチオピア人達の笑顔が我々の心を和ませてくれました。
旅の後半はケニヤへ飛行機で移動しました。空港からホテルに向かう途中で近くの自然保護区にいるキリンの群が悠然と歩いている光景を見ることができ、明日からのサファリでの動物観察に期待を持たせてくれました。翌朝四輪駆動車にてキリマジャロの麓に広がるアンボセリ国立公園へ5時間ほどかけて向かいました。途中でキリマンジャロの勇姿が見えてきた時には皆感激し車を停めて写真を撮りまくったのですが、公園内のロッジに着いた時にはそれが無駄な努力であったことが判明しました。このロッジからは何時でも雄大なキリマンジャロが観察できたからです。早朝、夕方のそれぞれ4時間ほどのサファリ、そして昼間は公園内で共生しているマサイの村を訪問するなど無駄のない日程で大自然の中で生きる動物やその大自然と共生して生活するマサイ族の人々と接することができ都会の喧騒に慣れた我々には心が洗われるようなひと時でした。 特に朝靄に浮かぶキリマンジャロをバックに移動するヌーやアフリカ象の群れは圧巻でした。また群からはぐれた象が少しイライラしながら我々の車に向かってきた時は皆緊張の一瞬でした。これも野生ならではの出来事でしょう。
最後にナイロビのスラム街の近くにある幼稚園を訪問しましたが施設は古く、トタン板を貼り合わせたような教室でしたが、ケニヤの将来を担う子供達を暖かく教え、育もうとする先生たちの熱意が我々にも伝わり、最後に幼稚園や小学校の生徒と一緒に記念撮影をする時の笑顔は忘れ難く感動の一日でした。
今回はエチオピアとケニヤを訪問し、地球上に人類が誕生した地域が貧困に苦しみながら明るく生きている様子を見て、文明が発達し過ぎて何もかも手に入る我々の社会と比較し、幸福度に違いはどれだけあるのかを考えさせられました。
文責 田中国智